アーノルド・ミンデル『自分さがしの瞑想』

西洋と東洋をどちらもよく理解している人はあまりいない。たまにいても評価されない。正しく評価できる人がいないからである。アーノルド・ミンデル博士(1940-)の提唱するプロセス指向心理学が、しかるべき評価を受けているとは言い難い理由は、そんなところかも知れない。「動いているスピリット」とも言うべき「プロセス」を信頼することが鍵になるが、このプロセス自体を科学的に定義することがまず困難ではないかと思う。私たちの現在の人格である「一次プロセス」は、未来からのメッセージである「二次プロセス」に常に脅かされているが、多元的な意識の構造とか、プロセス自体が私たちをどこに導こうとしているのかといった難問に、容易に答えは与えられない。そうした基礎理論上の性格はあるものの、この本で明らかにされる瞑想法は、(静座して心の動きを観察するといった)基本をかじったことさえあれば、誰でも十分に理解し実践することができるものである。逆に、瞑想中に(繰り返し)浮上する雑念や妄想を無視することなく、メッセージとして受け取るべし(瞑想したい私が一次プロセスで、入って来る邪魔が二次プロセスで、両者間の葛藤を眺めているのがプロセス自体と言える)と書いてあるので、仏教やヒンドゥー教の瞑想を極めた上級者にはおすすめしづらい。しかし、ここからスタートする恵まれた初心者だけでなく、すでに瞑想に親しんでいる人も、道しるべになり得るヒントを本書の中にたくさん発見できるはずである。

※本書だけではプロセスワークの瞑想法が具体的にイメージできない場合、同著者の『うしろ向きに馬に乗る』(春秋社、1999年)を副読本にするとよい。