植物日記

土の感触を忘れてしまってから、生きることが難しくなってきた。
気が付いたときには、迷子になっていた。
虚空を泳いでいて、帰る場所が見当たらない。
私はずっと泣いていた。

どんなことがあっても地球が食べさせてくれる。
そういう支えを感じてはじめて私は生きて行くことができる。

もう一度土と繋がりたい。
その願いが強くなった。


植物は
手を伸ばせばそこにいて
涙を拭ってくれる
優しい女性の抱擁のようだ

それなのに私はただ立っていて
待っていて
叫んでいる


例えば
赤い実がなっている
オレンジ色の花が風に揺れている
焚火の煙が青空に上っている
線香の匂いがする
秋の日に

部屋の外には光が溢れている
澄んだ驚き
自分一人じゃもったいない
誰かに伝えたい


いつも心に引っ掛かっている

美しいプラスチックが
土に還る日は来るのだろうかと

100万台のテレビや冷蔵庫や
車やビデオデッキは
どこへ消えてしまうのだろうかと

100万本の殺虫剤や洗剤や塗料は
どこに流されているのかと

本当は知っている
土を通して
私の血の中へ流れ込んでいることを


太陽があった。

光だけが存在していて
目の前にあるものは影が織りなす幻に思える

遠くから、あるいは頭の奥底から聞こえてくる
懐かしい響きが呼んでいる
それは小さな陽光を伴っている

私はここにいるのだろうか。


ある日突然、ドアが叩かれた。

一人で生きて行けるということも、私は一人であるということも間違っていた。
傲慢だった。

私は知った。どうしても愛が必要なことを。
空気と同じように、どこにでも存在するたくさんの愛が。

自分を愛することを学ぶために私は生きている。


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