パラマハンサ・ヨガナンダ『あるヨギの自叙伝』

古来、インド文化の特徴は、究極の真理の探究と、それにともなう霊的師弟関係にある。

アメリカに渡ったインドの聖人、パラマハンサ・ヨガナンダ(1893-1952)の自伝である。すでに名著の誉れ高い本書の内容は説明しないでおこう。師匠であるラヒリ・マハサヤとスリ・ユクテスワに加えて、アーナンダマイー・マー、ラマナ・マハルシ、タゴール、ガンディーといった有名人も登場する。インド哲学は、その歴史的背景から切り離しては理解できないし、切り離そうとするべきでもない。文字通りに受け取れば極端な思想も含まれる『バガヴァッド・ギーター』、パタンジャリの『ヨーガ・スートラ』、シャンカラの『ウパデーシャ・サーハスリー』といった古典に親しむ前に、その実際の適用がどんな風であるかをよく知っておく必要がある。この本には奇跡や超常現象の話が頻出するが、それがインド哲学の本来の姿なのである。ヨガナンダの歩んだ道、すなわち、愛情に恵まれた家庭環境で育ち、神への熱望から道を志し、親切で卓越した霊的教師たちの指導を受け、遂には神人合一を達成する、というのがスピリチュアリティの王道であるべきだと思う。言い換えれば、トラウマを生み出す劣悪な家庭環境で育ち、恐怖や不安から逃れるための方法を探し求め、ニセモノの自称教師たちの悪影響のもと、遂には自らもスピリチュアル詐欺師に成り果てる、というシナリオが世の常であってはならない。精神世界では、まだ自分の経験になっていないことに関しては中庸を貫くという態度を身に付けることが非常に大事なので、分からないことに対して判断を保留できるかどうか自分を試して欲しい。何かいいこと(現世利益)を期待して大師にすがりつくのも、不完全な科学理論を振りかざしてイカサマと決めつけるのもよくない。クリヤ・ヨガを践行しない限り分からない、というわけでもない。姿勢を正される一冊である。