アーノルド・ミンデル『自分さがしの瞑想』

西洋と東洋をどちらもよく理解している人はあまりいない。たまにいても評価されない。正しく評価できる人がいないからである。アーノルド・ミンデル博士の提唱するプロセス指向心理学が、しかるべき評価を受けているとは言い難い理由は、そんなところかも知れない。「動いているスピリット」とも言うべき「プロセス」を信頼することが鍵になるが、このプロセス自体を科学的に定義することがまず困難ではないかと思う。私たちの現在の人格である「一次プロセス」は、未来からのメッセージである「二次プロセス」に常に脅かされているが、多元的な意識の構造とか、プロセス自体が私たちをどこに導こうとしているのかといった難問に、容易に答えは与えられない。そうした基礎理論上の性格はあるものの、この本で明らかにされる瞑想法は、(静座して心の動きを観察するといった)基本をかじったことさえあれば、誰でも十分に理解し実践することができるものである。逆に、瞑想中に(繰り返し)浮上する雑念や妄想を無視することなく、メッセージとして受け取るべし(瞑想したい私が一次プロセスで、入って来る邪魔が二次プロセスで、両者間の葛藤を眺めているのがプロセス自体と言える)と書いてあるので、仏教やヒンドゥー教の瞑想を極めた上級者にはおすすめしづらい。しかし、ここからスタートする恵まれた初心者だけでなく、すでに瞑想に親しんでいる人も、道しるべになり得るヒントを本書の中にたくさん発見できるはずである。

※本書だけではプロセスワークの瞑想法が具体的にイメージできない場合、同著者の『うしろ向きに馬に乗る』(春秋社、1999年)を副読本にするとよい。

ベッセル・ヴァン・デア・コーク『身体はトラウマを記録する』

高等教育では、心理学は基礎から始めて臨床に進むという順番になっている。だが、心理学に興味を持った一般人は、長い時間をかけて基礎から積み上げるのではなく、心理学が実際どのように役に立つのかを一番先に知る必要がある。そこで手引き書を探すわけだが、あまりに選択肢が多く、なかなか困難である。精神病理学は荷が重すぎるし、かと言って、科学的な根拠が明確でないカジュアルな流行本も好ましくはない。一般人にとって心理学はやはり臨床が肝であり、具体的にどんな可能性があるのかを分かりやすく教えてくれる本が必要であろう。PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されるかどうかは別として、人は誰でも、大なり小なりトラウマを抱えて生きているものである。この本のテーマはトラウマであり、それゆえ絵空事のような学問としてではなく、自分自身や身近にいる人に引きつけて理解することができる。専門知識がない読者を想定して説明してくれるので、視床、扁桃体、前頭葉、ミラーニューロン、エピジェネティクス、脱感作といった用語を初めて聞く場合でも有用な知識を得ることができる。多くの臨床例が取り上げられるが、当然気楽に読める内容ではない。臨床心理学に進もうかどうか漠然と考えている若い人にとっては、この本を読むことが、自分に向いているか否かを判断するための格好の試金石にもなる。セルフヘルプ本ではないので、読者が自分で実践する目的には書かれておらず、あくまで臨床家の存在を前提にしているが、トラウマの治療法としては、断片化した感覚や感情を認識し、解離した経験を統合するトップダウン型の方法と、リズミカルな動きやツボのタッピングといった経路で、脳幹の警報システムを解除するボトムアップ型の方法とがあり、両方を併用することで一層効果が上がるという。もちろん投薬治療の可能性も否定されてはいない。幼少期の虐待やネグレクトが人生を大きく狂わせ、ひいては多くの社会問題の根本要因になっているという研究が示され、支援のための仕組み作りを著者は訴えている。